教訓と危機感と思い切り
台湾でお世話になった大家さんからラインが来た。
日本で元気に過ごしてますかといった安否確認だった。こうやってたまに連絡してくれるのは素直に嬉しい。
「わたしは元気ですが、日本のウイルスの状況は良くないです。」
二言目には新型コロナの話が出る。
「日本はマスクの在庫が足らないと聞いたよ、送ってあげるよ!」
大家さんは心配してかこんなことを言ってくれた。それから
「台湾の状況は落ち着いている」
と一言送ってきた。そうですよね、よく存じています、マスクを送ろうかと気遣ってくれるほどだし。
一連の新型コロナウイルス感染症の日本政府の動きや対応の遅さについて、もううんざりしている人は山のようにいるだろう。4月に入ってから東京都内の感染者はさらに爆発、14日から今日まで毎日100人を下らない数の感染者が確認されている。無症状者も含めたら、もっといるってことだ。
4月になって今更決まることが多すぎる。なんてのんびり腰掛けていたことよ。
多くのメディアも報じているが、台湾はコロナ対策成功国と言い切れる。本当に。
4月23日時点で台湾内の感染者数は合計426人、4月に入り1日の感染者数が0人の日もあった。
コロナ対策、台湾にあって日本にないもの、それは教訓と危機感と思い切りだろう。
2003年SARSの教訓
台湾は過去にウイルス感染症の封じ込めに失敗した痛く苦い経験がある。2003年に中国で発症したSARSだ。台湾内で多くの感染者数と死亡者数を生んだSARSによって、失業者や倒産、就職難などと言った二次災害も当然起きた。当時私は小学生だったこともあって、このニュースは記憶にないけれど、台湾人が忘れることなどないだろう。2度と同じ苦しみを味わってはいけない。なんとしてでも阻止しなくはいけない。こう言った強い意志と教訓が、今回の対応のはやさにつながったのは言うまでもない。
中国関係から生じる危機感
現在の台湾は反中国政策をとっている。そして、台湾と中国の関係はフクザツである。台湾は独立していたい。そして2019年に香港で起きた民主化デモを見て、香港を台湾と重ねた人は少なくない。だからこそ尚更、台湾は台湾でいなきゃいけない。
政治の話はさておき、台湾は世界保健機関(WHO)に加盟していない。理由はもちろん中国との関係云々。
自分たちで台湾を守らなきゃいけない。そして自分も他人も感染から守らなきゃいけない。
彼らはいろんな意味で危機感を持っている。そして、それを感じられる。
感染拡大防止への思い切った対応
台湾は今年に入ってすぐに入国制限を出し、2月のうちにマスクの生産強化と実名でのマスク購入制限、学校の休校延期など早くから混乱を予想して手を打っていた。留学中にも実際に街の様子やニュースを見てきたし、台湾の友達もとても用心深くしていたことが印象にある。早いうちに振り切って対応することで、感染の拡大は防げる。そのスピード感と力強さが、人々の不安を取り除き、政治への信頼が上がる。
台湾が日本に200万枚のマスクを寄贈したというニュースを見た。
アベノマスクa.k.a.カビノマスクはくだらないけれど、台湾からいただいたマスクは医療従事者や最前線で感染症対応している人に届いて欲しい。本当にありがたい、台湾に感謝。
教訓、危機感、思い切り。日本はこれを全部未来にいかさなきゃいけないね。